晴れた朝ににこっと笑って、ランペルティーザは小さなピンク色の鼻を舐めた。
今日も気分よく目が覚めた。
良い日になりそうだ。
相棒のマンゴジェリーはまだ寝ている。
ぼさぼさの太い尻尾まで動きを止めているから、かなり深く寝入っているのだろう。
ここで飛び付いて驚かしてやっても面白いが、ランペルティーザは最近もっと面白いものを手に入れた。
抜き足で音をたてずにそーっと、2階の一室に忍び寄る。
この家が空き家になる前、そこはこの家の主の書斎だった。
主を失って大分たつというのに、古い紙とインクの匂いがいつまでも消えず、薄暗さも相まってランペルティーザと相棒はほとんど足を踏み
入れることはなかったが。
「カーバっ!!」
「ひぅ!?」
予備動作なしで飛び込むと、本棚に座っていた雄猫は奇妙な悲鳴を上げて飛び上がり、そのまま本ごと床に落ちた。
きゃっきゃっ、と喜び笑うランペルティーザを苦笑いで見つめかえす。
「…ランペルティーザ。びっくりしたよ」
おや、とランペルティーザは首を傾げた。
彼がフルネームで呼ぶときは、本当に怒っているらしいということに、最近、気がついた。
「…ごめんね?」
「今は良かったけど、危ないだろう?」
床に落ちた本を前足でとじなおし、片隅へ押しやる。
「それで、僕になにか用かい?」
「うん! デートしよう!」
この言葉に、カーバケッティは変な顔をした。
突然の誘いだが、彼女にとっては、突然ではない。
今日は天気が良かったのだ。
そして、カーバケッティが思っている以上に、ランペルティーザはカーバケッティを気に入っているのだ。
「きみにとっての、デートって?」
「走ろう!」
「そう来たか」
ランペルティーザは仲間の猫が大好きで、みんなと遊んだりしたいとは思うけれど。
「走るの嫌?」
「嫌ではないけど、得意じゃない、かな。あっという間にランプに置いていかれると思うよ」
「大丈夫!」
「根拠の無さそうな返事だね」
一緒に走りたいのは、相棒の他にはカーバケッティだけなのだ。
「一緒に走ろう! ね!」
「…どこまで行くんだい?」
諦めたような返事がかえってくればこっちのもの。
ランペルティーザは嬉しさでいっぱいになって跳び跳ねるように踵を返し、部屋をでる。
「どこまでも行くよ!」
風みたいに。と言う彼女の言葉に、カーバケッティは納得する。
そうか、彼女は風になりたいんだ。と。
「捉えどころがないのも、無理はない…か」
座りっぱなしで強ばった体では、本当に置いてかれてしまうだろう。
カーバケッティは前足、後足と伸ばして体を振るうと、薄暗い書斎を後にした。
----------
設定
年齢:14歳くらい。
小柄な体で短い鍵尻尾。
お屋敷といって差し支えない空き家に住んでいますが、そこは単なる作戦地…もとい、色々なところに塒があり、また、疲れたらそこで休め
ばいーじゃん的な考えを相棒(兼保護者)のマンゴジェリーから受けています。
走ることが大好きで、走っているうちに感じる遠くまで行けそうな、空まで駆けていけそうな感じが好きなのかな。
カーバケッティとは恋猫未満。
とてもとても気に入ってはいる様子。
気に入っているので、お家に呼んでみた。
だけ(笑)
お気に入りをコレクションするのとおんなじかもしれない。
大好きなひとが一緒の家にいたら嬉しくないですか。
なんかそんな感じ。
だからおかしいというならそこで住み続けているカーバケッティのほう。