銀縞模様の仔猫は、少しばかり変わり者だった。
街の片隅で生まれた生粋の野良猫だったが、人間のする事にとても強い関心を持っていて、とくに生活というものを知ろうと人間の家を覗いては、母猫にたしなめられていた。
「どうして、いけないの」
母猫は仔猫の満足するような答えを与えてはくれず、仔猫は人間の家を観察することをやめなかった。
そのうちに母猫は仔猫のことを諦めた。
時折、いるのだ。
人間に魅入られてしまう猫が。
「それがあなたの幸いであるなら、そのようにしなさい」
そう言って、母猫は仔猫を人間の家の庭先に置いて、街を去った。
もともと、放浪猫だったらしい。
ただ、仔猫は人間に魅入られた訳ではなかった。
人間に餌をもらわなくとも、早いうちから狩りを覚えていたし、必要以上に近づくことも、近づかれることもなかった。
人間の生活を観察するうちに、わかったことは、人間はとても、猫に似ているのだということ。
無意味と思えることを習慣としていたり、無駄なことに固執したり。
面白い、と思った。
「変わり者だな」
とは初めて白黒猫に会ったその日に言われた言葉だ。
意味を捉えきれず、否定しないまま、仔猫は大人になった。
銀縞模様の美しい、誰もが見惚れるようなたくましい雄猫に。
「相変わらず、人間の家に出入りしているのか」
放浪していた兄猫が久しぶりに戻ってきて尋ねると、困ったようにほほえんだ。
「いや、今は人間の家を塒にしている」
「ついに飼われ猫になったか」
からかうようなランパスの言葉に、しかしマンカストラップは首を傾げる。
「どちらが飼われているのか分からない。彼は餌を用意するときもあれば、忘れることもある。自分の食事さえ忘れていることがあるから、逆に俺が食事の時間だと教えたりもする」
「なんだそれは」
「人間はとても面白い。言葉さえ分かれば、親しく付き合えそうな気がする」
「相変わらず、変わってるな」
「ありがとう」
「いや誉めてない」
呆れた顔をする兄猫に、マンカストラップは微笑んだ。
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設定
やっぱりマンカストラップさん難しい(-_-;)
人間の家に住んでいるけど、飼われているつもりはなくて、人間が好きだけど、親しくするつもりもなくて。
舞台の上から唯一、人間(観客)に語りかける、というところから(長老は除く。別格だから)なんだか変わり者の人間贔屓って感じ。
あと、大体の年齢みたいなんを書いときましょうか。
せっかくの設定ですから。
勿論人間換算で。
1歳5カ月くらい、とか言われてもピンとこないし。
というわけで年齢は27歳。
特技は飛び立つ鳥を狩る事。