夕暮れ時の、柔らかな光線が地面に濃く長い影を落としていた。
昼間は日差しのおかげで暖かかったが、それも少しずつ薄れていく。
熱を失っていく。
その感覚が、好きなのだと思う。
たとえば、変な姿勢で眠ってしまった時の腕の重み。うとうととまどろみながらも、どこか覚醒した部分では、ああ、このままでは痺れるな、痛くなるなと意識した時。
意識すると途端に感覚はそこに集中し、血の流れがせき止められ、溜まっていきどん、どん、と心臓に合わせて脈動するのを感じる。
そしてその先は、じんわりと感覚を変えていく。
感じていた重みが痛みに代わり、脈動を感じると共にすんすんと冷たくなっていく手先。
何も感じないと同時に、痛みを感じる。
その相反する感じが好きだ。
この体は生きている。と感じる。
ひらり、と目の端に光が見えて顔をあげる。
「起きていたの?」
夕暮れの光を受けて、白猫が佇んでいた。
「さすがに、座ったままでは眠れない」
「あまりにも静かで、動かなかったから、寝ていたのかと思ったわ」
「死んでいたのかもしれない」
冗談めかして言ってみたが、ある意味で、そうなのだろうと思い至り、笑った。
思いに沈んで、他のなにものにも意識を向けてはいなかった。
「そうね」
黄色い猫の笑いをどう受け取ったか、白猫は鼻先で彼の肩口に触れる。
「あなたは、冷たい。」
毛並み越しに触れただけなのに、彼女の体は暖かいのだと知った。
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年齢:???30代くらい
黄色い猫。
うちのサイトではマキャヴィティと同一猫です。
別人格でもなく。
ただ、"マキャヴィティ"というのは概念というか、悪魔の名前のようなものじゃないかと思っています。
裏切り者を"ユダ"と呼ぶような。
理解の及ばない恐ろしいもの、こと、現象を猫たちは"マキャヴィティ"と呼ぶんだと思います。
真面目で無邪気で残酷で。
独自の哲学を持っているのかもしれない。
ヴィクトリアが一方的に興味を持っているけれど、黄色い猫も、自分に興味を持って近づく白猫に興味があります。
リーナも正体不明な"マキャヴィティ"に憧れをもって追っていますが、それは偶像でしかないので黄色い猫はリーナには興味ないのです。