「タンブルの表情を読めるなんて、カッサしかいないんじゃない?」
遠慮のない物言いに、周りの雌猫達はくすくす笑って、それは言いすぎ。とジェミマを窘める。
「だって、いっつもおんなじ顔して。怒ってるのか笑ってるのかわかんないんだもん」
大人の雌猫達と対等であろうと背伸びをする、その精一杯の口調と幼さの残る頬の形が愛らしいな、と思いながら眺めていると、どうやら顔に出ていたようで、ジェミマは大きな目をぱちぱちさせた。
「なによう。すっごく余裕の笑みだわ」
「余裕?」
首を傾げると、ジェミマは頬を膨らませた。
「いいなあ、素敵な恋猫。そんな風になんでも分かりあえるのがいいな!」
「分かりあえる…」
その一言が引っかかり、カッサンドラは思いに沈む。
分かりあえる、というのは、どの程度の事を言うのだろう。
私は、彼を完全に理解しているとは思えない。向こうだって、同じだろう。
むしろ、タンブルの方が理解に苦しんでいるのかもしれない。
あれで結構、分かりやすい男なのだ。
表情が無い分、感情が揺れない分、揺れ動いた時がはっきり分かる。
それは静かな水面の、小さな波紋に似ている。
「一緒に居れば、嫌でもきっと分かってあげられるようになるわ」
そうだ。分かってあげる誰かが居れば、それで良い。
なんの問題も無い。
くす、とカッサンドラは笑った。
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30くらい?
時には子供っぽく、時には男っぽく。
理解の及ばない存在です。
カッサンドラを大切にしすぎるところが、ちょっと危ういところ。
彼女は慈愛とか、そんなもので出来ているようで、誰かにわが身、この命をささげることを自然としてしまうようなところがあって、タンブルはそれを恐れているのです。
恋愛感情というよりは、片割れとか、片翼とかそんなふう。
カッサンドラは案外ドライなので、ある意味片思いかもしれない。