生きる。という事は、彼女にとってあまり大きな意味を持っていないのではないだろうかと、タンブルブルータスは常々思っている。
勿論、死を望む訳ではない。
死を美化する事もしない。
しかし、それを過度に恐れている訳でもないようなのだ。
自分よりも一回り小さく、濃いアイラインに縁取られた黒真珠のような目は、常に柔らかな光を湛え、なにかおもいに耽っているような、そんな雰囲気を持っている。
己が塒にしている教会に安置されている古ぼけた像。幼子を抱えた女性をかたどったものだったが、その眼差しが、良く似ていると思った。
「タンブルは、その像が好きね?」
色あせたその像を見上げていた時、不意にカッサンドラに言われたことがある。
黙って見下ろすと、彼女は少し、首を傾げた。
「あなた、良く見ているもの。…私も好きよ」
「そうか」
「小さい子は、どんな生き物でも可愛いわ」
言うと彼女はするすると台座を上り、女性の体に爪を立てて子供の傍まで辿りつくとその丸い頬を舐めた。
その愛情深いまなざしが、やっぱり隣に並ぶ女性と似ていて、タンブルブルータスはなにか尋常でない寂しさと、愛おしさに襲われたのだった。
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設定
年齢:タンブルと同じ
タンブルのとこに書いちゃったな。
女性性の象徴。