まだ幼いながらも、彼女は自己というものを持っているように思えた。
黒目がちな、どこか潤みがかった目でまっすぐに見つめられると、まるでなにか後ろめたいことを見抜かれたかのような、(実際のところ、なにもしていないにも関わらず)そんな気持ちにさせられた。
彼女が見つめているのはたとえば、生き物の原罪だとか、欲望や悪といったもので、それを持った自分は、なんと汚れた存在であるかと彼女の前に恥ずかしく頭を垂れるしかない。
「なんだか、ヴィクトリアと一緒に居るとそんな気にさせられる」
「そうかな」
「そうだよ」
だから、ミストが羨ましい。
と、彼は言った。
良く晴れた、けれども風の強い日だった。
日当たりをとるか、それとも風を避けられるが日の当らない場所に陣取るか、まだまだ空気は冷たい春の午後、猫達はそれぞれ思いおもいの場所に居ながら、なんとはなしに互いに体を寄せて座っていた。
ミストフェリーズも例外ではなく、出がけに丁寧に撫でつけた毛並みを乱す風に辟易しながら、ゴミ捨て場にやってくるとあたりをぐるりと見渡して先に述べた思案を巡らせ、結局は一番心安く思っているコリコパットの隣にくっついて座った。
「ヴィクは、そんなこと考えてないと思うけど」
「そうかな」
「そうだよ」
風に嬲られる耳が心地悪く、コリコパットは細い耳をぱたり、ぱたりと何度か動かし、隣に座り風に目を細める黒猫を見やり、笑った。
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年齢:14
本人がいないっていう。
はたからみて彼女はコリコの感じているような猫ですが、ミストはそうじゃないのを知っている。
普通の、ちょっと夢見がちで現実主義な女の子です。
周りが自分の外見とか、イメージでみていることにちょっとがっかりしているので、そんなイメージで話しかけてくる雄猫にはちょっと冷たいです。
でもコリコはそれをモノともしないあっけらかんとした前向きさと強さと明るさを持っているので、ヴィクトリアも惹かれると思います。
ヴィクが月ならコリコは太陽。
ミストは星で、黄色い猫は闇。