なにか騒がしい声を聞きつけて、無意識に意識が浮上する。
冬の貴重な陽だまりの中、うとうととまどろんでいたカーバケッティはふるりと髭を震わせ、欠伸をすると、一体何事が起ったのかと視線を巡らせる。
ペンキのような青い空の下、また、甲高い声…笑い声だろうか。悲鳴のようにも聞こえるそれは、幼い二匹の猫が発したようだった。
寒さよりも、己の発する熱量が勝るのだろう。
白勝ちの三毛猫とひよこ色の仔猫は、ちょこちょこ走りまわって飛びついては白黒の斑猫の昼寝を妨げ、怒らせて喜んでいた。
「おやまあ」
なんとも。
命知らずな。
そんな感想を抱いてから、しかし、カーバケッティは首を捻る。
喧嘩屋。大親分。そんな物騒な二つ名で呼ばれていたあの雄猫は。
小さな太い前脚に顔を踏みつけられ、苛立ちふるう尻尾にじゃれつかれて、良いように遊ばれているようだ。
きっと、ジェミマを叩くその前脚は爪を極力引っ込めているのだろう。
シラバブを抑える、その腕にもさほど力は込められていまい。
「ランパス、遊ぼう!」
「ほら、シラバブが遊んで欲しいって!」
きゃっきゃと笑いながら、二匹はするりと逃げ出して、そしてもう一度捕まりに行く。
ぱたぱたと苛立たしげに耳を払ったランパスキャットがこちらに気付き、心底嫌そうな顔をした。
「なにをにやにやしてやがる」
鬱陶しそうに言う、その背中にシラバブが飛びつき、耳を齧る。
ぶるりと体を振るってその小さな体をふるい落とすと、ランパスはシラバブを前脚で叩いて転がした。
「いや、変わったな、と思ってな」
初めて会った時に感じた怖気を思い出し、苦い笑みを浮かべる。
己の敵とみなしたものを打ち倒す圧倒的な強さを、彼の狂気を、彼女たちは知らないのだ。
だからこそ。
「ランパス! 遊んでくれないと、バブが泣いちゃうんだから!」
「バブ泣かないよ! でも、遊ぼう?」
無邪気にじゃれつく少女たちを微笑ましく、そして僅かに愚かしくも思いながら、カーバケッティは静かな場所を求めて腰を上げた。
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年齢:37
昔はとんがってたけど今は丸くなったよ的な。
周りの若いのからは『めんどうくさがり』なだけの『遊んでくれるおじちゃん』です。
カーバケッティとは無二の親友。などと供述しております。
なお、カーバケッティ氏は否認している模様。
オールドデュトロノミーのおわすこの街で生まれ育ちましたがかなり若い時に放浪猫に。
あちこちうろついているときにカーバケッティとであったとかそんなざっくりした事は考えてあるけど細部は考えてない。
そんでふらりと街に帰った時にボンバルリーナに一目ぼれして、もうそのままどこにも行けなくなったという。
マンカストラップは可愛い弟。
ジェミマに対しては親のような兄のような感じで。
コリコパットに対しては、その辺の綿ぼこりとかに対するのとおんなじくらいの気持ちで接してる。
面倒くさがりだけど子供は好き。
個人的には37っておっさんではないんだけどな。