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ジェミマ

「あたし、行かなーい」

大きな目でぱちりとまばたきをし、ジェミマは言った。
ごみ捨て場の片隅、よく乾いた砂のさらさらした場所は、雌猫たちのお気に入りのようだった。
今日も今日とて美しい雌猫がくつろいで座り、毛並みを舐めたり、とりとめのないお喋りに興じたりしていた。

「あっそ。…バブは、どうする?」

良識ある雄猫(マンカストラップやカーバケッティくらいなものだが)なら割って入るのも憚られるであろう華やかな輪に、遠慮なく入り込んだ砂色の雄猫は、素っ気なく誘いを断ったジェミマの態度に気を悪くした様子もなく、足元で迷子の蟻をつついていた一番年下の仔猫に声をかける。
いつものこと。とジェミマは軽く体を舐めて、それとなく出掛ける準備をする。
彼が、自分たちを遊びに誘うのが、実は美しい姉猫たちに挨拶する口実なのだということは明らかだったが、それでも、一緒に歩けばある程度歩調をあわせてくれるし、面倒見は良い。
いつも太陽が天頂にくる少し前、必ず彼はやって来てジェミマに声をかけ、それからシラバブを誘うのだ。
大抵ジェミマが断り、しかしシラバブが一緒に行こうとねだって渋々…というのが常だった。
が。

「んーん…」

いつもなら飛び付くはずの仔猫はじっとうつむいたままで。
ジェミマはちょっとだけあせる。
どうやら、シラバブの興味は蟻に注がれているようだ。
コリコパットはぱたりと尻尾をひとうちする。
彼も、ランパスと同じで気が長い方ではないし、マンカストラップと同じく、心の機微には鈍感だ。
本当は木登りやかけっこ遊びもしたいけど、自分から行くのはちょっとイヤ。というジェミマの微妙な乙女心に気づくとは思えない。

「…バブが行きたいなら、あたしも行ってあげるけど」

あれだけ素っ気なく「行かない」と言った手前、これが、ジェミマの精一杯だった。

「バブ行かないって言ってんじゃん?」

「ねえ、バブ?」

「んー…」

蟻なんて、きっと公園にもいるわよ!
心のなかではシラバブに語りかける言葉の3倍の熱心さで、説得する。

「じゃー、ひとりでいくか」

「あっ…」

思わず唇からこぼれた声が予想外に寂しそうで、コリコパットは思わず変な顔をして妹猫の顔を覗く。

「バブが! 泣いちゃうから!」

「いや泣かねーだろ」

ありんこに夢中だし。
首筋の毛並みをふわりとさせて慌てて弁解するジェミマの気持ちなど全く理解できないシンプルな精神構造のコリコパットは変なの、と呟きぱたりと耳を動かし、首をかしげる。

「ひょっとしてお前が行きたいんじゃん?」

「違うもん! そうじゃないもん! バブのためだもん!」

ぷるぷるしながら大声をだすジェミマに、コリコパットは思わず顔をしかめる。

「バブも行きたいよね? ね!」

小さな頭に頭をくっ付け催促するが、頭をつけても考えまでは伝わらず。

ジェムも、行こう? って言ってよ…!

甘えた、舌足らずなおねだりの言葉はなかなか出てきてはくれないのだった。



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設定
年齢:14

ザ☆乙女。

大人になりたくて雌猫たちに加わって背伸びしてはいるけどやっぱり仔猫なので年相応に遊んだりもしたいの。
でも大人はそんなことしないよね…とか、考えてその狭間で揺れる乙女心☆ちょっと痛々しくも健気でもあるん。
バブがいいだしになってくれます。

お姉さんがたが居るのかいないのかわからない文章になりましたが、います。
そんなジェミマを微笑ましく見てます。
雌猫同士の関係は意外とドライなんです。


コリコとジェミマとバブの組み合わせは可愛すぎる。
お兄ちゃんとお姉さんぶりたい妹と末っ子。

小さい兄弟とかすきなんです。


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