すん、と鼻で息を吸い込む。
耳を立て、遥か遠くの空を見上げる。
美しい縞を描く水の流れが、透明な硝子で出来た鈴を思わせる美しい音が、透き通った薄い氷を透かす、午後の太陽の様な淡い金色の輝きをして感じられる。
この音が、この景色が自分以外の猫には感じられないことを、コリコパットは知っていた。
それがなぜなのか、はっきりとした答えは今だに見つからないが、『そういうもの』なのだと思
っている。
「コリコ、なにしてる?」
どこか張り詰めた、声をかけてはいけないような雰囲気を見せるコリコだったが、足元から遠慮なく掛る声にふと金縛りが解けたように力を抜き、その主を認めて表情を和らげる。
「ああ、空みてた」
「それは見れば分かる」
声をかけた黒猫と、返答に呆れたような顔をする三毛猫。
「虫でも居たのか」
「いや、雨が降ると思って」
「降る訳ないだろう。こんなに晴れているのに」
「コリコが言うんだから、間違いないんじゃない?」
青く、雲ひとつない空を見上げて眩しさに目を細めるギルバートと、首を傾げるミストフェリーズ。
「ミストは俺の味方! ギルは急に雨降って困ってもしらないからな」
ミストの小さな頭に額をくっつけ、親愛を示すと、黒猫はくすぐったそうに顔を前脚で擦る。
「なんだと」
ギルバートはコリコに軽く飛びついて、前脚で叩く。
驚いて飛び退いたのはミストで、コリコは楽しそうに笑って反撃する。
唐突に始まる喧嘩ごっこはいつもの事で、理由が無いのもいつもの事で。
「もー、やめなよ…っうわ」
呆れ顔で傍観者を気取っていた黒猫が巻き込まれるのもいつもの事だ。
そんな賑やかな若猫を、少し離れた場所で眺めながら雌猫達が噂し合うのも。
「コリコはいつも遊びの中心ね」
「凄く楽しそう。ギルバートと良い友達なのね、嬉しいわ」
「なんにも考えてなさそう!」
莫迦にしたようにぴしゃりと言い放つジェミマには、微笑みながらコリコを評価するジェリーロラムとタントミールの気持ちが分からない。
「きっと、悩みとか、全っ然ないのよ。空ばっかり見てるけど、雨が降るのも気付かないタイプだわ」
実際のところどの猫よりも鋭く聡い感覚を持ったコリコパットを妹猫は遠慮なくこき下ろし、コリコパットはくしゃみをした。
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設定
年齢:23才
まさかの下手組最年長。(ギルバートは年齢不詳なので)
子供扱いされて「子供じゃない!」って主張してるけど、そろそろそんな主張している事自体おかしい年頃。
でも実際23歳ってまだまだオコサマだよねぇ?
ええと、街の猫の誰よりも鋭い鼻と厳しい目を持っていて嵐が来るその気配を見逃さずに感じられるんです。
そうです。ジェリクルソングそのまま引っ張ってきた感じの設定です。
知っているのは(信じているのは)ミストだけ。
彼の言葉が当たったとして、それはたまたまだろうと皆思っています。
ちょっと自分は他の猫と違うなってのは思っていたけど、ミストに会ったらどうでも良くなった。
さらに100年以上の時をかけて3度も命を落としているギルバートという猫に出会ったらますます、猫の個性それぞれだなって考えになって、あえてそれをひけらかす事もしない感じです。
ミストとは少し似ている。
同調する事もしばしば、ある。
横浜公演の時のアレとか。
これはちゃんとした形で書いてみたいな。