001

ランペルティーザにはマンゴジェリー。
ヴィクトリアにはミストフェリーズ。
ボンバルリーナにはタガーのやつがいる。
ジェミマはまだどちらかと言えば仔猫だし、エトセトラやエレクトラはもっと仔猫だ。

「貴方が何を言いたいのか、理解に苦しむわ」

「カッサンドラ。そんな連れないことを言わないでくれよ」

すり、と頬を擦り付けると、彼女は抵抗もせず、かといって身を寄せたりもせず。

「愛してる」

囁く言葉も、聞いているのかいないのか、ぼんやり空を見つめている。
そのミステリアスなところがたまらない。
チョコレートを流したような滑らかな短毛の毛並みに青い瞳という外見はもちろん美しい。しかし、なにより美しいのはその華奢な体に秘められた神秘的なまでの高潔さだと、アロンゾは常々思っている。

「彼女達にパートナーがいるように、きみのパートナーに、俺を選んでもらえないだろうか」

「あら、だめよ」

熱っぽく語るアロンゾとは裏腹に、ひどくあっさりと彼女は申し出を断った。

「何故だ! 俺はきみをこんなにも愛してる!」

大袈裟な身振りでポーズを決めてみせても、彼女は優雅に首をふり、真面目な顔で言った。

「だって貴方とは星があわないもの」

「……………ほ?」

「星よ」

まったく真面目にそう言って、彼女はまた空を見つめる。

「今夜は雨が降りそうね」

と、晴れた昼の空に呟いたきり、彼女の柔らかな唇は閉じられてしまった。