どこか遠いところから来たという彼は、きっといつか、どこか遠いところへ行ってしまうと思った。
「カーバは、どこで生まれたの?」
「どうしてそんなこと聞くんだい?」
「遠いところ?」
「そうだね。きっともう二度と帰れないよ」
「帰りたい?」
「いいや。全く」
あまりにもあっさりと答えたものだから、本当に彼が生まれた街には未練が無いのだと分かって、ランペルティーザは口元が緩むのを誤魔化すように彼の胸元に頭のてっぺんをくっつけた。
「どうしたんだい? 寒い?」
「…あったかい」
彼のわき腹に体をくっつけて蹲ると、カーバケッティは少し戸惑ったように身じろぎし、それからランペルティーザを抱きこむようにくるりと丸くなった。
夏が終わり、秋がやってきた。
冷たい冬はもう、すぐそこに迫っている。