「よせ、やめろ!」
アロンゾは悲鳴を上げて、恋猫へのプレゼントに触ろうとする仔猫を避けながら歩く。
「俺、知ってるぞ。カッサに会いに行くんだろ」
「いいなあ」
タンブルブルータスとパウンシヴァルが、ちょこちょこと小走りにアロンゾの後を追いかけ、隙をみてはアロンゾの咥える黒い羽に触ろうとしている。
走ってしまえば簡単に引き離せるが、それをするにはプレゼントが大物過ぎる。
形を崩したくなかったし、風を受けて飛んで行っても困るのだ。
「知ってるぞ。カッサって、大きな家に住んでるんだ」
「お前からしたら犬小屋だって豪邸だろうさ」
「違うちがう。ニンゲンが住んでる家に、窓に座っているのを見たんだ」
莫迦にするアロンゾに、タンブルも食い下がる。
「見間違いだろ。お前、このあいだもコリコパットとタントミールを間違えたじゃないか」
「あのときは尻尾しか見えなかったんだ。でも、カッサを見間違えるわけないよ」
「じゃあ勘違いだな。俺のカッサは…いいか、俺のカッサだ。気安く呼ぶな。…彼女は、ニンゲンに飼われたりしない。気高く、誇り高いん…こら、やめろ」
タンブルに意識を向けている隙に、パウンシヴァルがちょいちょいと前脚で羽をつついていた。
軽く叩いて転がすが、堪えた様子もなく、笑っている。
「タンブル! お前は年上なんだから、パウンシヴァルの面倒を見ろよ」
「アロンゾも年上じゃん!」
負けじと言いかえすタンブルに、歩みを止めてアロンゾは向き直る。
「俺は成猫、お前は仔猫。お前らが雌で将来別嬪になるっていうなら話は別だが、そんな期待は持てないだろ」
「スケベ」
「フェミニストと呼べ」
じっとりと睨むタンブルに、パウンシヴァルがすけべってなに? と尋ねている。
「アロンゾのこと! 行こう、ヴァル」
ぷいと向きを変え、公園の方へ歩いて行くタンブルには目もくれず、アロンゾは足早にゴミ捨て場に向かう。
パウンシヴァルは2匹の背中を交互に眺め、慌ててタンブルを追って走って行った。